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【現地ガイドが推す】最近おすすめのバロッサのワイナリー Part II

  • 執筆者の写真: Natsumi Matsuda
    Natsumi Matsuda
  • 8月10日
  • 読了時間: 6分

Eperosa(エペローサ)— バロッサの“現場主義”が生んだ静かな実力派

ワイナリーガイドをしていると、現地のスタッフたちと自然に顔見知りになっていきます。関係が深まるにつれ、通い慣れたワイナリーの裏話だけでなく、「今あそこが熱い」「面白い造り手がいる」といった、バロッサのコミュニティ内部ならではの情報も入ってくるようになります。


今回ご紹介するEperosa(エペローサ)は、まさにそうした現地の口コミから知り、実際に訪れてその実力に感動したワイナリーのひとつです。


6世代続くブドウ栽培家のDNAを持つ造り手

Eperosaのオーナー兼ワインメーカーであるBrett Grocke(ブレット・グロック)氏は、バロッサ・ヴァレーで6世代にわたりブドウ栽培を続けてきた家系に生まれました。


ワイナリーとブドウ農家は密接に関わっていますが、すべてのワイナリーが使用するブドウを自社で栽培しているわけではありません。反対に、ブドウ栽培の専門家として高品質な果実をワイナリーへ供給し、自らはワインを造らない優れた栽培家も数多く存在します。


ブレット氏は2001年にヴィティカルチャー(ブドウ栽培学)の資格を取得。その後、Grocke Viticultureを通じて、バロッサ・ヴァレーやイーデン・ヴァレー、アデレード・ヒルズをはじめとする南オーストラリア各地で、合計200ヘクタールを超えるブドウ畑の管理や技術コンサルティングに携わってきました。


そのため現地では、ワインメーカーであると同時に「ブドウ栽培のスペシャリスト」として高く評価されています。実際にバロッサのワイナリーで、「うちの畑もブレットに見てもらっているんだ」という話を耳にすることもあります。


Eperosaは、そんな畑の現場で積み重ねてきた経験と信頼から生まれた、ブレット氏自身のワインプロジェクトです。



“Wines built from the dirt up” —— ワインは土から積み上げるもの


ブドウ栽培の専門家が手がけるEperosaの哲学は、非常にシンプルです。

“Wines built from the dirt up(ワインは土から積み上げるもの)”

ワイン造りの出発点は、常に畑にあります。


Eperosaではオーガニックおよび環境再生型農業の原則に基づき、健全な土壌と生命力のあるブドウ樹を育てることを重視しています。


畑では、手作業による丁寧な剪定やシュート(芽)の間引き、房の間引きによる収量調整、機械と手作業を組み合わせた除草などが行われます。


そのアプローチは、「必要以上に手を加えないが、決して放置もしない」という絶妙なバランスの上に成り立っています。


収穫はすべて手摘みで行われ、収穫後のブドウも手作業で選別されます。同じ区画であっても、果実の成熟度を細かく見極めながら、複数回に分けて収穫することがあるほどの徹底ぶりです。


醸造は「介入ではなく観察」


収穫されたブドウは手作業で選別された後、小さな開放型発酵槽に入れられます。全房のブドウは人の足でやさしく潰され、発酵中は手作業によるピジャージュや、ラック&リターンによって丁寧に管理されます。


ピジャージュとは、発酵中に液面へ浮かび上がってくる果皮や種などの「果帽」を、やさしく液体の中へ沈める作業です。一方のラック&リターンは、発酵中のワインを一度別の容器へ移し、再び上から戻すことで、果皮から成分を穏やかに抽出する方法です。


通常18〜24日間、果皮とともに発酵・浸漬されたワインは、伝統的なバスケットプレスでゆっくりと圧搾され、フレンチオーク樽へ移されます。


その後、キュヴェに応じて8〜20か月間、澱とともに静かに熟成。その間にマロラクティック発酵も自然に進んでいきます。


熟成を終えたワインは重力によって澱を沈め、手作業で丁寧に澱引きされます。清澄や濾過に頼らず、畑とヴィンテージの個性をできる限りそのままボトルへ移す、伝統的で低介入なワイン造りです。



セラードアでの体験

Eperosaのセラードアは、基本的に金・土・日の週3日間のみ営業しています。訪問時には、最新の営業時間を公式サイトで確認することをおすすめします。また少人数であれば予約なしでも訪問できますが、大人数で訪れる場合は、事前に問い合わせておくと安心です。


Rockfordが面するKrondorf Roadから、ブドウ畑の中へ続く砂利道をしばらく進んでいくと、左手にワイナリーが見えてきます。私が訪れた際には、愛犬のゴールデンレトリバーが出迎えてくれました。


Eperosaには、観光客向けに華やかに設えられたセラードアはありません。実際にワインが造られ、熟成されているワイナリーの中で試飲するのが、ここでのスタイルです。


季節によっては、発酵中のワインを見せてもらえることもあります。ワインが眠る樽を目の前にしながら、造り手本人から話を聞き、直接ワインを注いでもらえる。バロッサでも貴重な体験です。




テイスティングコメント

◆ Eperosa Magnolia 1941 Semillon 2023

Vine Vale(ヴァイン・ヴェイル)に位置する、1941年植樹の貴重なセミヨンです。

はちみつやレモンピール、白桃を思わせる瑞々しい果実味に、砕いた石のような緻密なミネラル感が重なります。


クリスタルのような美しい透明感と、古樹(オールド・ヴィーニュ)由来の柔らかな奥行きが共存する、非常に完成度の高い一本です。


◆ Eperosa Stonegarden 1858 Grenache 2015

1858年植樹という、気が遠くなるほど長い歴史を持つ畑から造られたグルナッシュのワイン。


深い果実味の奥に、古樹ならではの圧倒的な生命力とエネルギーが感じられます。グラスの中で時間とともに表情を変え、次々と異なる香りや味わいを見せてくれます。


バロッサの“生きた歴史”そのものを、液体として味わうような特別な体験をもたらしてくれるワインです。


◆ Eperosa Magnolia 1965 Shiraz 2022

1965年植樹のブドウから造られたシラーズです。


プラムやラズベリーを思わせる明るくジューシーな果実味に、鉄分やグラファイト(黒鉛)、柑橘の皮、そして上品なスパイスのニュアンスがきれいに折り重なります。


果実の瑞々しさと、緻密な構造の美しさが見事に両立した仕上がりです。


Eperosaというワイナリーの本質

Eperosaは、華やかなストーリーマーケティングやキャッチーな宣伝文句で語られるタイプのワイナリーではありません。


むしろその反対で、「畑とワイナリーの現場で実直に積み上げられてきた経験と時間が、そのままワインという形になっている」ような存在です。


だからこそ、グラスに注がれた液体の中には、造り手の過剰な意図やエゴよりも、その土地と環境が発する本来の声が素直に表れています。


バロッサの名門ワイナリーをいくつか巡った後にEperosaを訪れると、その「静かな、しかし決定的な違い」がよりはっきりと感じられるはずです。



 
 
 

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