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【現地ガイドが推す】最近おすすめのバロッサのワイナリー Part I

  • 執筆者の写真: Natsumi Matsuda
    Natsumi Matsuda
  • 6月15日
  • 読了時間: 4分

更新日:6月16日

Alkina(アルキナ):バロッサの常識を静かに塗り替えるワイナリー

ワイナリーガイドをしていると、よく聞かれる質問があります。


「最近おすすめのワイナリーはどこですか?」


バロッサにはRockford(ロックフォード)、Henschke(ヘンシュケ)、Yalumba(ヤルンバ)など、名門ワイナリーが数多くあり、1日かけても回りきれません。 ワイン好きのお客様の中には「2〜3日かけてバロッサを回りたい」というディープなリクエストも数多くあります。今回は、そうした方にまずおすすめしたいワイナリーをご紹介します。


バロッサといえば、一時期は「パワフルでジャムのように濃厚な果実味に、アメリカンオークを合わせたシラーズ」が代名詞でした。しかしここ数年、これまでのイメージとはまったく異なる動きが静かに、しかし確実に起きています。 今回ご紹介するAlkina(アルキナ)は、その象徴的な存在のひとつです。


アルゼンチン出身の富豪とテロワールの専門家が出会った場所

Alkinaの始まりは2015年。アルゼンチン出身の実業家であるAlejandro Bulgheroni(アレハンドロ・ブルゲローニ)氏が、バロッサ西部Greenock(グリーノック)にある古いブドウ畑を取得したことからスタートします。


彼はエネルギー事業で成功を収めた後、現在ではアルゼンチン、ウルグアイ、アメリカ、イタリア、フランスなど、世界各地で15以上のワイナリーを展開しています。単なる投資ではなく、「土地と哲学ごとワイン造りを設計する」というアプローチが特徴です。


そこに加わったのが、世界的なテロワール(土壌)研究の第一人者であるPedro Parra(ペドロ・パラ)氏です。この組み合わせが、Alkinaの方向性を決定づけました。


「同じ畑なのに、なぜここまで違うのか」


パラ氏は長年にわたりAlkinaの土壌を分析し、地質の違いによって畑を細かく区分しました。こうして生まれたのが「Polygon(ポリゴン)」プロジェクトです。


このプロジェクトでは品種(グルナッシュ)、樹齢、醸造方法を統一し、変えるのは土壌だけ。 ワインの違いを技術ではなく、土地そのものの個性で証明する試みです。土壌の個性を最大限引き出すために、オーガニック及びビオディナミ農法も取り入れられています。


実際に複数のPolygonを並べてテイスティングすると、同じグルナッシュとは思えないほど香りも構造も異なり「畑の違い」がそのまま味として立ち上がってきます。


伝統と実験が共存する醸造哲学


Alkinaでは野生酵母による発酵に加え、全房発酵やスキンコンタクトも取り入れています。


熟成には新樽をあえて使わず、コンクリート・エッグやアンフォラ(クレイ)を使用。樽で味を“作る”のではなく、ブドウ本来の表情をそのまま引き出すスタイルです。その結果、どのワインにも共通して「透明感」と「奥行き」が同居しています。


セラードアでの体験


セラードアは19世紀に建てられた歴史あるコテージを改装した空間で、バロッサの歴史的建築の雰囲気をそのまま残しています。敷地内には宿泊施設もあり、ワイナリーでの滞在も可能です。


セラードアではBulgheroni氏が世界各地で手がけるワインも提供されており、「International Flight」を選ぶことで、バロッサ以外の彼のワインポートフォリオも体験できます。


目玉は「Polygonシリーズ」のテイスティングで、要予約・100ドルのプレミアムフライトです。その分、スタッフやワインメーカーが畑ごとの違いや背景を丁寧に解説してくれるため、「なぜ味が違うのか」を体験として理解できる貴重な時間になります。


「少し試飲に100ドルは高い」と感じる方には「Classic Flight」もおすすめです。特に Semillonは評価が高く、テクスチャーの美しさとミネラル感が印象的な一本です。


Polygonシリーズの比較


◆ Polygon No.3 Grenache 2023

Polygon No.3区画の石灰岩と片岩質土壌で育ったグルナッシュ。淡い色調ながら香りは非常に複雑で、赤系ベリー、スパイス、オレンジの花、カカオのニュアンスが層のように広がります。透明感と躍動感にあふれ、バロッサの従来のグルナッシュとは一線を画すスタイルです。


◆ Polygon No.2 Grenache 2023

硬い片岩と石灰質土壌から生まれたグルナッシュ。赤い果実やオレンジの花、スパイス、ミネラルのニュアンスが重なり、透明感のある果実味と繊細なタンニンが美しく調和しています。土壌の個性を見事に映し出したエレガントな一本で、生産量が極めて限定されている希少なワインです。


◆ Polygon No.5 Grenache 2023

石灰岩と片岩質土壌由来のエレガントなグルナッシュ。淡いルビー色で、ラズベリーやチェリー、スパイス、花の香りに加え、紅茶のようなニュアンスが重なります。軽やかで繊細ながら、ミネラル感と骨格がしっかりと感じられる仕上がりです。


バロッサの中でAlkinaが示す新たな方向性


Alkinaは決して派手さで注目を集めるワイナリーではありません。むしろバロッサという長い歴史を持つ産地の中で、「なぜこの土地のワインはこういう味わいになるのか」という根本を、もう一度丁寧に問い直している存在です。


名門ワイナリーを巡ったあとに訪れると、その“静かな違い”がよりはっきりと感じられるはずです。そして私自身、この数年で最も「バロッサに対する見方そのものを更新された」と感じたワイナリーのひとつです。


次回はまた違う視点から、バロッサのもう一つの表情をご紹介します。


 
 
 

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